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2017.09.19 ESD関連ニュース レポート 

【取材レポート】ESD実践研修会 in 伊豆

イベント名 ESD実践研修会 in 伊豆
開催日 平成29年8月24日(木)13:30~16:30
場所 伊豆市立天城中学校(静岡県伊豆市)
主催 静岡大学 ESD・国際化ふじのくにコンソーシアム
伊豆半島ジオパーク推進協議会
後援 NPO法人 持続可能な開発のための教育推進会議(ESD-J)
属性 学校 ジオパーク

 

◆背景
伊豆市立天城中学校では、2009年より当時の大塚明校長によりESDの取り組みをはじめ、2010年にユネスコスクールに加盟し、同年には第1回持続発展教育(ESD)大賞中学校賞も受賞している。

そもそも天城中がESDに取り組むきっかけとなったことは、生徒たちの自尊感情が低かったことと将来、伊豆市に住み続けたいと考える生徒がほとんどいなかった点である。そこで、伊豆市の学校教育目標でもある「ふるさと伊豆 に誇りを持ち、 夢やこころざしを持って、心豊かに生きる子どもの育成」を達成するために、 「自信をもって想いを発信できる生徒の育成」 を学校経営目標として取り組んできた。ESDに取り組んで以降、文部科学省の全国学力学習状況調査の結果を見ても、「地域や社会で起こっている問題や出来事に関心がありますか」などの項目が全国と比べても明らかに高まっている。

こうした取り組みの中で、ESDの活動として生徒たちが地域の人と一緒に環境保全の活動を行ったり、外部講師を招いた授業を行ったりするなど、「天城学習」という生徒が自ら地域を調べ、課題解決のため実践する活動も積極的に行われてきた。伊豆半島は本州で唯一、フィリピン海プレートの上に位置し日本ジオパークにも登録されている事から、天城中でも「地球(ジオ)を学び、丸ごと楽しむ」ジオパークに関しての学習も行われた。ジオパークで実施する活動は、“保護活動・教育活動・持続可能な開発”がセットになった取組みであり、ESDの取り組みと重なる部分が非常に多いことから、今回のジオ×ESDの研修会を実施するに至った。

 

◆内容

本研修のテーマは、『「持続可能な地域の創り手を育てよう!」ジオ×ESD ~新学習指導要領 総合的な学習の時間のねらいに対応して~』という事で、主に学校教員を対象に行われた。

まず主催の「ESD・国際化ふじのくにコンソーシアム」の事務局である静岡大学教育学部の梅澤収教授の挨拶から始まり、実施校である、伊豆市立天城中学校の日吉隆徳校長より、「ESD」とは~天城中学校のESD実践から~と題した講演が行われた。

天城中学のESDの主な取り組みは、「天城学習」と名づけられた総合的な学習の時間に、生徒たちが様々な体験を通して学ぶものがあり、デイサービスセンターを訪問したり、「つげ峠鹿柵プロジェクト」に参加するなど、地域の施設や人と積極的に連携し、実際の地域の活動に関わる生きた体験を積む活動がある。日吉校長は、この4月に異動されたばかりであるが、これまでの学校の取り組みを引き継ぎ、それをさらに発展させている様子が紹介された。

その後、「ジオパークと地域の自然・歴史・産業・文化のつながり」と題し、伊豆半島ジオパーク推進協議会の鈴木雄介専任研究員より、天城中学で行ったジオパークの学習や、ジオパークの取り組みの紹介がされた。最後に、天城中学でESDの取り組みを始めた大塚明元校長により、ワークショップ「みんなで考えよう ジオ×ESD」として、参加者同士で、伊豆地域の自然、歴史、産業、文化の視点とジオとのつながりから物語(ストーリー)を考える、というテーマで3つの班に別れグループワークを実施した。私の参加したグループでは、狩野川の鮎についての話題となった。狩野川は、鮎の漁法の一つである友釣りの発祥地と言われ、かつては多くの釣り客で非常に賑わったが、現在は鮎の数も減少し、釣り客も減少した。鮎が減った原因を調査しそれを解決することで釣り客の増加や鮎料理の復活を目指したい、というストーリーが出来た。これはまさに、地域の課題を解決し、環境・社会・経済のバランスの取れた状態を目指す、「持続可能な将来ビジョン」と言えよう。ESDは、何をテーマにするかが重要だが、ESDを導入しようという時に、こうしたワークショップでテーマを見つけるというのは、良い参考になる。

 

◆参加者の様子
現役の先生はじめ、ジオパーク関係者が参加し実施された。これまで関わりのある方が多かったが、初めて参加される方もいる中、天城中学の取り組みについて、熱心に聞き入っていた。ワークショップが実践型であったので、地域に帰ってESDを進めたいという声もあった。

参加者アンケート(主催者のご協力により、掲載しています。)

 

◆まとめ
ESDは分かりづらいという声も聞かれるが、天城中の取り組みやジオパークとの連携は、地域を深く学ぶ事に主眼が置かれ、地域の将来を担う人材育成を目的にしている点が明確であり、目標にブレがないため分かりやすい。また、天城中学校の日吉校長は発表資料の中で、「目指すのは持続可能な開発であって、ESDが目的ではない」としている。ESDは入り口が広くゴールも多様であるが、「地域課題とその解決方法を、生徒自らが考える」という視点は、教育のツールという枠を超えて、「地域の将来をどうするか」という少子高齢化に対する地域全体の課題解決へのリアリティのあるアプローチであると言えよう。


またジオパークの活動のように、既に地域で取り組まれているESD的な活動と連携するという事は、双方にとってメリットである。伊豆半島ジオパーク推進協議会は、伊豆のジオ的な特性がそもそも極めて特徴的な事もあって、盛り上がりを見せている。ジオパークのネットワークとESDが融合すれば、それだけダイナミックな動きとなり、相乗効果が生まれることになる。ジオパークだけでなく、ESD×○○というようなコラボは非常に相性が良く、今後も様々な分野での連携が期待される。

 
 

◆連絡先:
ESD・国際化 ふじのくにコンソーシアム
伊豆半島ジオパーク推進協議会
伊豆市立天城中学校

 

取材:伊藤博隆(関東地方ESD活動支援センター)

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