ホーム > ESD関連ニュース レポート  > 【取材レポート】親子で学ぼう! 人間と動物のつながり ―縄文人のくらしを探る―

ホーム > ESD関連ニュース レポート  > 【取材レポート】親子で学ぼう! 人間と動物のつながり ―縄文人のくらしを探る―

2017.08.22 ESD関連ニュース レポート 

【取材レポート】親子で学ぼう! 人間と動物のつながり ―縄文人のくらしを探る―

イベント名 親子で学ぼう! 人間と動物のつながり
―縄文人のくらしを探る―
開催日 平成29年8月15日(火)14:30~18:30
場所 東京都立埋蔵文化財調査センター(東京都多摩市)
東京都多摩動物公園(東京都日野市)
主催 (公財)東京都スポーツ文化事業団 東京都埋蔵文化財センター
(公財)東京動物園協会 多摩動物公園
属性 社会教育

 

◆背景
 東京都立埋蔵文化財調査センター(埋文センター)は昭和60年に設立され、展示施設では、多摩ニュータウン遺跡から出土した本物の縄文土器を実際に触ったり、持ち上げてみることもでき、様々な企画展示や講座が行われている。
 多摩動物公園は、昭和33年に開園し、園地にはコナラ、クヌギ、トチノキなどの木々が生育しており、ライオン、ゾウ、キリンなど代表的な動物園動物の展示以外にもイノシシ、ツキノワグマ、ノウサギなど日本産動物を展示している。運営する(公財)東京動物園協会は、2011年には生物多様性保全活動宣言を行うなど、動物園として様々な取組みを行っている。
 多摩市、日野市と隣接している両施設では、3年前より縄文時代の人と動物の関係を、歴史と動物の両視点から深める催しをはじめ、それぞれの強みを生かした社会教育プログラムを連携して実施している。
 
◆内容
 埋文センターに集合し、開催あいさつ等のあと、「縄文人が何を食べていたのか?」を想像し、机に並べられたタヌキやドングリなどの動植物の剥製や模型などから好きなものを選び、その入手方法を参加者が考え、解説を受けた。例えばイノシシやシカは、落とし穴や弓矢で狩りをし、肉や内臓等を食料として食べるだけでなく、毛皮は防寒用として利用し、骨や角を生活道具を作る材料として利用するなど、縄文人が動物たちをどのように利用したかの解説があった。また館内に展示されている多摩ニュータウン開発の際に出土した土器を触ったり、縄文人の暮らしについての解説を受けた。土器の説明の際には、縄文中期前半の土器には、蛇がモチーフにされたものもあり、縄文人が蛇に対して特別な思いを抱いていた等の説明もあった。

 モノレールで4駅の多摩動物公園に移動し、縄文人が動物の習性を知る手がかりにしたであろう糞や足跡の説明をした後、イノシシ、シカ、ノウサギ、ツキノワグマの観察を行った。ワークシートの問いかけに沿って動物を見ながら、動物園職員から動物の特徴を、埋文センター職員から縄文人が抱いていたその動物への思いなどを聞いた。その後室内に戻って、ヘビの話を聞き、アオダイショウを触る体験を行った。
 

ワークシート:ヘビ、足のないハンター!

ワークシート:縄文人の食料と動物の利用
 
◆参加者の様子
  本企画は親子向けの企画であり、7組が参加した。両施設には、触れることが可能な土器や、生きた動物という子供の興味を引きそうなものがあり、それらを活かした職員の方の解説を、子供たちは熱心に話を聞いていた。また、参加者向けに人間と動物との関わり合いについて学べるワークシートを配布している。これは、事前に両施設の職員の方が協議して、本企画用に作成したものだ。参加者の親子に話を伺ったところ、このプログラムには小学生の女の子が興味を持ち、親に頼んでつれて来てもらったとの事だった。まだ学校で歴史は学んでいないが、自分で興味を持ったとの事で、一緒に来た母親も「両方の施設から解説を頂いて、とても勉強になった」と言っていた。

 
◆まとめ

 今回、両施設が元々のミッションとして持っている社会教育の取り組みを、考古学と動物学の接点で協働し、動物公園の立地環境も活用して、相乗効果をあげている。また、学校の授業で学ぶ内容について、社会教育施設において実際の土器や動物などインパクトの大きいものに触れることで、生徒自身が興味・関心を高める事につながる。これにより、自ら学ぶ姿勢となり、学校で学ぶ際に、より能動的・積極的に学ぶことで、参加者は学習すべき内容を自分のものとして獲得できる。
(参考:環境省 ESD環境教育モデルプログラム ガイドブック3:3~5ページ)
 ESDは学びのスタイルとして、「教える」でなはく「学び」を重視している。学習者自身が様々なものに興味を持ち、自ら「知りたい」と思うことが自律的・自主的な学習につながり、より深く定着した学びになる。そのためには、本プログラムのように、子供が興味・関心を持ちそうな方法でまず関心を高めるというのは、重要なプロセスであると言えるのではないだろうか。また、社会教育施設において、学校で学ぶべき学習指導要領の内容を、専門的かつビジュアル的にも魅力的なコンテンツ(プログラム)を作り連携すれば、学校教育における質も自ずと向上することだろう。
 また、今回のように社会教育施設同士が連携する事で、学習内容がよりシャープに魅力的になることは、多面的な学びを目指すESDにおいては極めて重要な観点であり、様々な施設間の連携に期待したい。

 

連絡先:
東京都埋蔵文化財センター
多摩動物公園

 

取材:伊藤博隆(関東地方ESD活動支援センター)

ホーム > ESD関連ニュース レポート  > 【取材レポート】親子で学ぼう! 人間と動物のつながり ―縄文人のくらしを探る―
ホーム > ESD関連ニュース レポート  > 【取材レポート】親子で学ぼう! 人間と動物のつながり ―縄文人のくらしを探る―