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2022.09.01 SDGs関連 センター事業 レポート 教員・指導者向け 

<開催報告><教員対象>令和4年度 高校の探究の時間でSDGsに取り組むには、どうすれば良いかを考える勉強会


日時 令和4年8月8日(月)14:00~16:30
場所 東京ウィメンズプラザ・ 視聴覚室B・C
東京都渋谷区神宮前5-53-67 コスモス青山1F
対象 教員、教育委員会の方(主に、中高)、中高生の指導に関わる方
参加者 22名
主催 関東地方ESD活動支援センター(関東ESDセンター)
協力 (一社)ESD TOKYO

 

【企画趣旨】

学習指導要領の改訂により、高校に「総合的な探究の時間」が科目として導入され、SDGs をテーマに取り組んでいる学校も増加しており、SDGs は広く社会に認識されるようになりました。
その一方で、SDGs を総合的に理解する機会は限られており、当センターにも SDGs に関した授業の進め方について、お問合せを頂いています。こうした背景から、主に高校の教員の方を対象に、本勉強会を企画しました。学校等で SDGs を題材に授業を展開する先生方から、カリキュラム・マネジメントを見据えた上での導入経緯、取り組みの目指すゴールなどについてお話いただき、参加者の皆さんとディスカッションを行いました。

 

【プログラム】
 

■趣旨説明

関東地方ESD活動支援センター:島田幸子
ESD/SDGsについての概略、ESD事例の紹介、前回の高校向けESDプログラムの紹介
 

■第1部:3名の現役高等学校の教員によるESD実践報告

私立高校での取組事例SDGs

山藤 旅聞 氏
・新渡戸文化中学・高等学校 副校長 
・(一社)Think the Earth SDGs for schoolアドバイザー
・(一社)旅する学校 代表理事

2004年より都立高校で生物の教員となり、オール実験の授業や生徒の「問い」だけで進める授業、生徒が主体的・自立的に学びを進める「対話式・双方向性授業」などを実践。現在は、教科と社会課題をつなげて、生徒自らが解決に向けて「行動する」ことを目指す授業スタイルを確立する。具体的には、企業やNPO/NGOとパートナーシップを組んだPBL(project based Learning)を実施し、現在は120を超えるプロジェクトを生み出している。

 

公立高校での取組事例SDGs

田中 駿一 氏
・東京都立南多摩中等教育学校教諭(地理歴史)

大学院卒業後、都立工業高校勤務を経て2019年より現任校。教科は地理歴史。フィールドワーク推進室(校内分掌)に所属し、中学3年の探究学習のデザインや中高生対象の檜原村フィールドワーク、オーガニックコットンの栽培、SDGs活動、日野市と提携したプログラムなど多岐にわたる生徒の探究活動の教育支援をしている。『アクティブラーニング実践集 近代・現代』実践事例執筆や歴史総合の資料集の執筆など。

 

学校外からの取組事例

木村 裕美氏
・(一社)ESD TOKYO 執行役員

家庭科教師歴27年。元都立高校主任教諭。NHK総合講座家庭総合監修者。東京都教育委員会設定教科「人間と社会」研究開発担当。高校リーダーシップ教育。ESD東京執行役員。現在は、幼児に対するリーダーシップ教育の実践、コーチングの提供、森林保全活動等を実施中。

 

■第2部:ESD実践について考えるワークショップ

今回、企画からご協力頂いた松井晋作氏の進行により、ワークショップを行なった。

松井 晋作 氏
・(一社)ESD TOKYO、共同代表
・桐蔭横浜大学教育研究開発機構専任講師

大学院修了後、高校教員として10年間従事。その後、多摩大学を経て現職。
ESD TOKYO共同代表理事として、学校と社会をつなぐコーディネート事業や教育プログラム開発、教育効果検証ツール、カリキュラム・マネジメント事業等の多数実績あり。研究分野は、教育社会学。特にESD(持続可能な開発のための教育)、GCED(地球市民教育)、SDGsの実践と研究。中等教育を対象とした教育データ分析や授業改善、ICTを活用した授業実践など。

 

3つのグループに分かれ、ディスカッションを行った。参加者の大半は教員の方で、実際に高校で探究の授業に関わっている方が多かった。まず自己紹介や学校での課題意識などを共有し、高校の探究の時間でSDGsに取り組むにあたっての課題などを共有した。各グループから出てきた主な意見は下記の通り。

 

Aグループ

  • 学校の中の課題;生徒の関心、評価…
  • 外部のリソースとのつながり方;企業も、どうやって学校とつながっていいかわからない、学校側も分からない
  • 学校内の温度差;学校に戻ると、思いが一致していない
  • 学校内の共通の理解、マインドの部分が重要、大前提

 
Bグループ

  • 目指す方向が一致してない。探求を売りにしてるというのに、、、 温度差
  • 定義づけが学校内でできていない 意欲、探求にどんな意味があるのか?
  • 数字・成果が、地域からも求められている
  • リソース;外部との連携における課題
  • 生徒は「好き」についても発言できない=心理的安全性が必要。
  • 教員も含めて、思っていることを発言できる場がない
  • 職員会議も報告会になってしまう
  • 探求の目標、意味、学力を言語化することが重要と感じた

 
Cグループ

  • SDGsを達成する動機付け、「好き」の流れから
  • 本人の動機がないと、ウォッシュ。目的と手段の反転。
  • 後付けはいいけど、目的にしてはいけない、という話も出た。
  • 「結果的にそうなる」という方向にもっていく
  • とっかかりは簡単なところ、問いを立てやすいところからでもいいのかも
  • 教員の探究力が何よりも重要。
  • 外に出る先生が限られる
  • 言語化する重要性
  • 生徒の好きの前に、先生の好き・得意を引き出すことも重要。
  • 教育に携わりたい、は原点のはず。みんなでプログラムを作っていくことが重要

 

 

まとめ

最後に、ファシリテーターの松井晋作氏より、今日のまとめをして頂いた。


<口頭説明の要約>
1.学校の中と外
・学校の最上位目標の設定の仕方。「誰が主体なのか」、「どう自立させたいか」など、その設定がスタートとして大事。これをやるのは難しいと思うが、山藤先生の学校のように、全教職員が集まって目標設定をしないといけない。これがブレると、学校の中での統一は難しいと感じた。
「トップダウンは良くない」とよく言われるが、実はトップダウンもボトムアップも、両方必要。これが学校の難しいところで、これらが融合することがポイント。学校というのは、昔からの先生が居たり、異動で人が変わったりするが、学校の独自の伝統文化というのは結構ある。学校は、前例踏襲型でこの文化が変わりにくい。その時のキーワードは、黒船ではないが、やはり「外圧」。今日、発表して頂いた先生は、みんな黒船。
大事なことは、学校内外の最上位目標を作った時に、どう現状を打破していくか、新しい風の作り方で一番簡単なのは「外との連携」だと僕は思う。中での改革は、校長や経営者が変わって「よし、やるぞ!」と言って変われば良いが、それが変わらない場合には、無理やりにでも地域、企業、団体などと連携するしかないのではないか。
そして連携のスタートは、ハッカソンではないが、生徒にやらせないと無理ではないか。

 

2.心理的安全性の担保
先生ができることは、生徒が自立的に「この環境なら出来る!」とアクションを起こせるような、その心理的安全性の担保を確保すること。先生から生徒への動機づけや、きっかけづくりは出来ると思うが、それにはやはり教員のパワーが必要。ただしこれは、先生の働き方改革に逆行してしまうので、トップ(学校経営層)の仕事として、担当の先生の校務分掌的な整理をして、部活や授業などを軽くしてあげて、先生の授業以外の仕事の時間を確保する。先生が忙し過ぎて幸せではないと、生徒も幸せにはならない。先生が楽しいと、生徒も楽しい。なので心理的安全性の担保は、生徒にも先生にも必要。

 

3.ゴール設定
最後のゴールをどこに持っていくか。大学でいうとディプロマポリシー(卒業要件)。「どんな生徒を育てて、ここを卒業させたいか」。学力や偏差値へのニーズに対しても、企業も凄く変わってきており、人手不足もあり、昔に比べて企業に就職しやすくなっている。「良い大学に入らないと、良い企業に入れない」というのが変わってきている。だからこそ、「やりたい事」とか「育てたい力」を、全体ゴールを設定していく中で、「この学校では、こういう生徒を育てたい」どいう目標を、みんなで作っていく事が大切だと、今日の先生方のお話を聞いて感じた。

 
 

ご参加者コメント(アンケートより抜粋)

  • 実践報告もワークショップもよかったので、もう少し時間があればよかった。
  • 企画・提案する上でのヒントとなりました。(特に新渡戸文化)
  • 他の先生との交流がとても勉強になりました

 

 
 
 
まとめ:関東地方ESD活動支援センター 伊藤博隆

 

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