〈開催概要〉
日 時 | 令和3年1月24日(日)13:00~17:00+交流会 |
開催方法 | オンライン(zoom) |
参加 | 64名 |
主 催 | 関東地方ESD活動支援センター、環境省関東地方環境事務所 |
〈企画趣旨〉
国連が2015年に定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」は、世界の諸課題に対して17の目標を設定し、2030年までに解決することを目指しています。昨今、教育の現場でもSDGsに注目し、課題解決型の学習(PBL)などの取り組みが増えてきました。今回の関東ESD推進ネットワーク地域フォーラムでは、関東地方の地域ESD拠点の活動を深掘りするとともに、そうした取り組みをどうやって全世代型に広げていくかを考える場としました。
関東ESDセンターでは今年度、中高生がSDGsについて考える“SDGs文化祭”の開催に協力し、ユースが参加する機会を設けてきました。SDGsは、よりよい未来のための取り組みであり、ユース世代はまさに未来の担い手です。今後、SDGsを推進するには、ユースと一緒に作っていくプロセスが重要ではないでしょうか。今回のフォーラムではユース世代にも参加を呼びかけ、「ユースと創る未来」を皆さんで考えたいと企画しました。
■開会挨拶
・環境省関東地方環境事務所 環境対策課 鈴木課長
■趣旨説明
SDGs/ESDに関する最近の動向と、関東地方ESD活動支援センターの取り組みについてご紹介しました。
・関東地方ESD活動支援センター:島田幸子
▶発表資料
■SDGs文化祭の狙いと成果
・一般社団法人ESD TOKYO 共同代表理事 佐藤 駿介 氏 (私立高校教諭)
令和元年度より、実行委員会形式で開催したSDGs文化祭について、内容と成果について、ご報告をしていただきました。
▶発表資料
■【全体会】ユースが考えるSDGs
令和2年度のSDGs文化祭で、高校生が実施した取り組みを紹介し、各分野の実践者からコメントを頂きます。
①SDGs を絵本で “伝える”チーム
「SDGs はまだまだ認知度が低く、もっと多くの人に SDGs を知って欲しい」という思いから、SDGsを学ぶ絵本を作成。
●発表者:Amiさん(千葉・高校2年)、ひかるさん(千葉・高校2年)
●実践コメンテーター:上田壮一氏 (一般社団法人 Think the Earth 理事)
▶ユースの発表資料
▶ユースが作ったホームページ「ユースがつくるSDGs絵本」
●実践コメンテーター:上田 壮一 氏 (一般社団法人 Think the Earth 理事)からのコメント:
SDGsの「誰一人取り残さない」という根本的な概念に気がついてフォーカスしている点がすごく鋭いですね。主人公のニックの日常の中でお話が展開する点は、同世代の読者や、本を読み聞かせるお母さんにわかりやすく伝わっていくと思います。今後の展開として「本を作ること」を目的とするのではなく、それを手段として何を伝えていくか。読んだ人が、次の人に更に何を伝えることができるか。を意識して今後、展開していって欲しいです。
②国内の外国人支援 チーム
●発表者:ゆめさん(静岡・高校1年)、しほさん(東京・高校2年)、
なほさん(山梨・高校2年)
●実践コメンテーター:大野 覚さん
(認定NPO法人 茨城NPOセンター・コモンズ 常務理事 兼 事務局長)
▶ユースの発表資料
●実践コメンテーター:大野氏からのコメント:
「自分ごと化」することが難しいのがSDGsであり、同時に「誰もが関係している」のがSDGsであります。そして、知らないふりをしようとも思えばできてしまう問題の集合体でもあります。これから、いろいろな立場の人を巻き込んで活動していくことが重要となっていきますが、ユースの若い世代が同世代を含めて発信しながら伝えていくことが ますます大事な活動になっていくと考えています。
③エコファッション チーム
●発表者:Risaさん(千葉・高校2年)
●実践コメンテーター:植月友美 氏(Enter the E (株) 代表取締役社長)
▶ユースの発表資料
作成したホームページ 「TOWA」
●実践コメンテーター:植月氏からのコメント:
私は大好きな洋服というものが、環境や服を作る人を犠牲にしている現実が苦しくて、その世の中を変えたいという思いからこの事業を始めました。そのため、リサさんに共感する部分がとても多かったです。衣類の問題でも、まずは「リディユース(減らす)」、次に「リユース・リサイクル(再利用)」という数ある段階から自分で「リユース」を選べたことがまず1つ目のいい点だと感じました。また、古着に対する一般的な不満・不便に着目し、そこから仮設を立て、発展をしていくことができていることが2つ目のいい点だと感じました。ここから更に数値を加えて問題を整理していけるといいと思います。
■【分科会】 発表×実践コメンテーター×教育コメンテーター
「どうしたら、研究テーマの課題の解決により繋がるか」を考えるために、高校生から発表内容が完成するまでの動機・背景を探る時間となりました。加えて、現在社会の第一線で活躍されている「実践コメンテーター」、「教育コメンテーター」の方からご意見をいただきました。参加者の方からもチャットやビデオで質問を受けつけ、相互に発表内容の理解を進めました。
① SDGs を絵本で “伝える”チーム
ユース | Amiさん(千葉・高校2年)、ひかるさん(千葉・高校2年) |
実践コメンテーター | 上田 壮一 氏(一般社団法人 Think the Earth 理事) |
教育コメンテーター | 佐藤 駿介 氏(一社)ESD TOKYO) |
ファシリテーター | 島田幸子(関東地方ESD活動支援センター) |
【実践コメンテーター︓上田 壮一 氏の取り組みの紹介】
Think the Earthは20年前から、事業を通じて社会を変える活動を行っており、地球の様子が分かる時計を開発したり、写真集「百年の愚行」を発行し、ビジュアルブックを作り、学校に寄贈するプロジェクトなどを行ってきた。
子どもたちと未来をつくる「SDGs for School」の取り組みを2017年から実施しており、「未来を変える目標 SDGsアイデアブック」を2018年に発行し、現在700校に40冊ずつ送り、SDGsのツールとして活用してもらっている。
このほか、ボルネオ島のスタディツアーや、先生向けの勉強会なども行っている。SDGsを伝える人をもっと育てたいという趣旨で、エデュケーター講座などを行っている。
また超文化祭という、中高生が300人ほど集まり、SDGsに関する発表や、大人とのコラボを行うイベントも開催している。
▶上田 壮一さんの活動紹介資料
・一般社団法人 Think the Earth
・SDGs for School
・超文化祭
●教育コメンテーター:佐藤 駿介 氏
((一社)ESD TOKYO 共同代表理事 ) からのコメント:
中高教員として生徒に授業を実施している者の視点からすると「絵本の中に答えを示さない。」というのは勇気のいることだと思います。答えを示さないのであれば、一番伝えたいことである「誰一人取り残さない」を読み手にどう解釈して欲しいのかを決められると、絵本の中での「問の立てかた」が決まってきて、今ある作品を活かしつつ、より一歩深い視点で伝えることができると思いました。
② 国内の外国人支援 チーム
ユース | ゆめさん(静岡・高校1年)しほさん(東京・高校2年) なほさん(山梨・高校2年) |
実践コメンテーター | 大野 覚氏 (認定NPO法人 茨城NPOセンター・コモンズ 常務理事 兼 事務局長) |
教育コメンテーター | 松井晋作 氏(一社)ESD TOKYO) |
ファシリテーター | 高橋朝美(関東地方ESD活動支援センター) |
【実践コメンテーター︓大野 覚 氏の取り組みの紹介】
コモンズは外国人支援だけでなはく、NPOの設立や運営の相談や、引きこもりや生活困難者の就労支援、こども食堂の運営など、20年前から多様な活動をしてきている。多文化共生事業としては、保育園、外国人児童の日本語支援、学童保育などを行っている。今年度は、コロナ対策として学習支援のオンライン化、増加する外国人の生活困窮者の相談、ビザが切れそうな外国人のひとり親支援などを行っている。
▶大野覚さんの活動紹介資料
・認定NPO法人 茨城NPOセンター・コモンズ
・JUNTOS
●教育コメンテーター:松井 晋作 氏からのコメント:
SDGsの最重要課題は命を守ることです。UNESCOホームページの記載内容を解説すると「命の危機の時は孤立をしないこと、誰かに助けを求める事、それを社会で守っていくこと。」がとても重要です。外国の人が不登校になったり、災害時食料を手に入れられない事は、情報にたどりつけないことで、孤立してしまったりコミュニティに参加できていないことが原因です。外国人支援を共通テーマに選んだ高校生の皆さんと 今日ご参加いただいている方達にこのことをお伝えしておきたいと思いました。
③エコファッション チーム
ユース | ユース りさ さん(千葉・高校2年) |
実践コメンテーター | 植月友美 氏(Enter the E (株) 代表取締役社長) |
教育コメンテーター | 建元 喜寿 氏 (筑波大学付属坂戸高等学校 教諭) |
ファシリテーター | 浦林貴子(地球環境パートナーシッププラザ) |
【実践コメンテーター︓植月友美 氏の取り組みの紹介】
作る人と環境に配慮した洋服だけを集めたエシカルファッションのセレクトショップのCEOをやっている。人生をかけてやりたいことが、「地球と人が洋服を楽しめる社会の両立。」アパレル産業は、全くサステナブルな環境になく、それぞれの工程で大地を枯らしていたり、水や大気の汚染を引き起こしているほか、大量廃棄、労働搾取の問題がある。エシカルファッションへの関心は高いものの、そうした商品の流通が少ないため、ビジネスをはじめた。
▶植月友美さんの活動紹介資料
・Enter the E (株)
・ボーダレス・ジャパン
●教育コメンテーター:建元 喜寿 氏からのコメント:
キーワードになるのは「わくわく」になるのではないかと感じました。SDGsやESDを始めると、どうしても「課題発見」が先にきてしまい嫌になってしまうこともありますが、リサさんのお話を聞いて「好き」から入っていくということがすごく大切だなと感じました。
■【全体報告会】
各分科会で話し合われた内容をファシリテーターから報告後、コメンテーターの方から感想を発表いただきました。チームによって話し合われたことが異なり、発表内容の特色の違いが大きく出てきた場面となりました。
総合ファシリテーター:伊藤博隆(関東地方ESD活動支援センター)
①SDGsを絵本で “伝える”チーム :ファシリテーター島田幸子(環境パートナーシップ会議)
②国内の外国人支援 チーム :ファシリテーター高橋朝美 (環境パートナーシップ会議)
③エコファッション チーム:ファシリテーター浦林貴子 (環境パートナーシッププラザ)
総合コメンテーター 高田 研 氏
当センターの企画運営委員長を務めて頂いている、都留文科大学特任教授の高田先生より、本日のフォーラムに関するコメントです。
「高校生がここまでやるのか!高校生すごい!」というのが率直な感想です。またSDGs文化祭に「学びの場のデザインをする力」がとても大きく働いていて、こういったことができる若い人たちが育ってきたなという喜びも感じました。
長年、学校内に存在してきた「子どもたちが外に出て学ぶことができない壁」を完全に払拭しているイベントでしたね。一番大切なことは“一生懸命あそぶ” ことです。楽しくないとみんなが関わってこないし、楽しくやっていたことが、社会的な貢献になっていった結果が今日の発表内容だと思います。「市民教育」として、学生の時から学校教育のなかで市民として社会と関わっていくことが、環境教育の原点だと今日は感じました。
■【交流会】
交流会には大人・高校生合わせて26名の参加をいただきました。前半では参加した分科会毎に別れて、分科会の時間内では聞けなかった追加質問が続きました。特に、発表した高校生からは発表内容を整理・まとめる過程で、東京大学ENPOWERのメンターの方々への感謝の気持ちが多く聞かれました。
後半は、感想共有となりましたが、各分野で経験を積んだ大人の方々から 事業展開へのアドバイスが出る一方で、高校生から大人に向けてSNS活用方法の提案などがありました。
カジュアルな雰囲気のなかで、相互に自分の得意分野を語る様子は世代を超えた交流となり笑顔の多いとてもよい時間となりました。