【実施概要】
日時 | 令和6年7月17日(水) 13:20~16:30 |
場所 | 千葉市教育センター |
対象 | 小・中・中等教育・特別支援学校教職員の皆様 |
主催 | 千葉市教育委員会/千葉市 環境局 環境保全部 脱炭素推進課 企画班 |
研修タイトル | 持続可能な社会の創り手を育てるためのESD研修 -子供たちと一緒に考える、未来の地球のための授業づくり- |
講師 | 大塚 明 氏(元伊豆市立天城中学校校長) |
ファシリテーター | 伊藤 博隆(関東地方ESD活動支援センター) |
千葉市では、市内公立学校でのESDの促進に向け、教育委員会と環境教育担当部署(環境局)が連携し、教職員向けの研修を実施している。関東地方ESD活動支援センターでは、千葉市からお声がけいただき、令和4年度より研修の企画に協力させていただいている。令和4年度は、コロナ禍のためオンライン開催となったが、令和5年度から対面での研修を実施し、今年度はその2年目となった。ESDとSDGsの繋がりや学校でESDを取り組むべき理由、ESDの実践例を知ることで、学校現場でのESD実践に繋がる手法の習得を目指して開催し、千葉市内各種学校の教職員の方にご参加頂いた。開催にあたっては、講義だけでなく、ESDの手法も体験していただく意味で、グループワークの時間も多くとっている。
【プログラム】
■自己紹介
・講師自己紹介
・参加者自己紹介(グループごと)
■講義1/学習指導要領とESD
講師:大塚 明 氏(元伊豆市立天城中学校校長)
◆主な講演内容
・なぜ今ESDなのか(中教審答申から)
・セバン・スズキの1992年リオサミット「伝説のスピーチ」動画視聴
→国連広報センターページ
・ESDの誕生とSDGsとの関係(世界の潮流)
・学習指導要領の前文の意味
・ESDが目指すものは?学校でESDを実践するために
・天城中学校でどのようにESDを捉え実践したか
・実践の様子(写真アルバム)
■事例共有/千葉県佐倉市でのESD実践事例
報告:伊藤 博隆(関東地方ESD活動支援センター)
配布資料
◆主な報告内容
関東地方ESD活動支援センターでは、令和4年度より「ESD学び合いプロジェクト」として、「気候変動による影響と対策に関する、学びと実践」をテーマに、プログラムを実施している。今回は、その一環として令和6年2月に千葉県の佐倉市立根郷小学校6年生を対象に実施したプログラムについて報告した。
・令和元年に佐倉市で発生した浸水状況
・水害が発生する「原因」=気候変動、昔の地形について専門家による講義
・水害への「対策」=ハザードマップ、避難所について専門家による講義
・災害に対して何ができるか、みんなで考える
■個人・グループワーク1
ESDは、地域の特性にあったプログラムを実施することが望ましいため、参加者の方に自校および児童・生徒に関してSWOT分析を行っていただいた。
SWOT分析とは、一般的には企業でマーケティングのツールとして用いられ、自社の外部環境と内部環境をStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの要素で要因分析することで、既存事業の改善点や伸ばすべきポイント、新規事業の将来的なリスクなどを見つけることができる手法。ここでは、地域・自校の強み・弱みとして分析した。
最初に個人でSWOTを実施し、後にグループで共有した。
グループは、小学校都心部、中学校郊外部、特別学校のような形で、学校種や地域特性を踏まえてグループ分けを行っている。
■個人・グループワーク2
SWOT分析による各校の特性をグループで共有した後、グループごとで対象校とテーマを選定し、ESDのプログラムを模擬的に作っていただいた。予め、記入事項と例を出し、詳細についてはグループに委ねた。
防災、地域の伝統行事、地元の公園、海辺の活用、農業と食歴史的地域資源など、様々なテーマが挙げられた。
グループワークが完成した後は、1人が説明者として残り、他のメンバーは自分が関心のあるテーマの発表を聞きに行く「ワールドカフェ方式」で共有を行った。発表を聞いた参加者には、付箋でコメントを残してもらい、フィードバックできるようにした。こうしたセッションを3回繰り返すことで、他グループの取組を、しっかり聞くことができた。
■講義2/天城中学校ESD実践の成果
講師:大塚 明 氏(元伊豆市立天城中学校校長)
◆主な講演内容
大塚明氏が校長としてESDに取り組んだ事例の詳細と、「天城学習」と呼ばれるESDプログラムを受けた生徒のその後の歩みを紹介して頂いた。
・ESD実践により現れた予期せぬ成果が現れた。
・天城の自然が持続不可能であることに気付いた生徒が「つげ峠鹿柵プロジェクト」を実施。後輩にも受け継がれ、自然体験学習を起点とした探求のサイクルが回った。
・体験や調査を通して地域の課題に気付き、学習発表会で地域に向けて発信。生徒が自信を持ち、主体的に動くようになったことがESDに取り組んだ最大の成果である。
・鳴門教育大学大学院生の協力の下、観察、インタビュー、質問紙による自尊感情の検証調査を行った。天城中学校の生徒の自尊感情は他校より高い値が示された。人や地域との「つながり」が「地域への誇り・愛着」を育み、自尊感情を高めたことが検証された。
■まとめ/学校でESDに取り組むための指針、ESD授業作りの留意点
最後に、講師の大塚先生より、今日のまとめをしていただいた。
【参加者コメント】(アンケートより抜粋)
研修実施後のアンケートでは、本講座の内容の満足度について、100%が「満足した」「おおむね満足した」と回答した。また、新しい発見や刺激があったかについても、100%が「あった」「ややあった」と回答した。
「グループワークを通して研修の理解が進んだ」「グループワーク、その後のシェアの時間が参考になった」など、グループワークを高く評価する声も多数いただいた。
本講座で学んだことを今後の教育活動にどう生かすかについて、以下のようなコメントをいただいた(抜粋)。
・子どもが課題を主体的に考えられるような声かけや活動機会を作っていきたい。
・自校に帰り、学年で共有し、ESDを意識しながら実践していきたい。
・これからの学校生活、学習指導の中でも、自己決定を大切に、自信につながる指導・支援に努めていきたい。
・総合学習の計画の立て方、またESDを今の学校現場で実践していく意味を学ぶことができた。
・各学年のテーマや課題設定にも活かせそうな内容が様々あったので、活用させていただきたい。
・学校で共有して、カリキュラムマネジメントの視点でも、生かしていきたい。
・計画を見直したり職員が協力して研修を重ねたりと準備が必要なので、すぐに実践することは難しい。そんな中でも子供が課題を「自分事」として捉えるということは共通している。答えを教える役割の教師ではなく、コーディネーター・ファシリテーターとしての役割を果たす教師になれたらと思った。