【企画背景】
これまでESDや環境教育は、小・中学校で実施される場合が多く、高校生を対象とした取組は少ないとされてきました。またSDGsが注目される中、SDGsに興味があっても周囲に仲間がいない生徒や、関心があっても学ぶ機会が与えられていない生徒も多いという声を受け、そうした生徒に参加を呼びかけ、SDGsについて学び・実践し、発表する場として、本文化祭は企画されました。この文化祭は、SDGsに強い関心を持つ中学生・高校生が自らの意志で参加し、学校や学年を越えてグループを作り、アクションした結果の発表の場です。
これまで3回の活動を通じ、それぞれにSDGsの課題解決につながる取り組みを考えてきました。この文化祭では、彼らが考え実践する、様々なSDGs への解決アプローチを、広く世の中に問うものです。今の高校1年生は、SDGsの目標年である2030年には27歳になり、さらにその先の50年後の未来の当事者でもあります。まさに「自分ごと」としてSDGsを考える、彼女・彼らとともに、大人はどのようにSDGsに取り組んでいけば良いのか、を考える場として実施しました。
【開催概要】
日時 | 令和元年11月16日(土)14:00~17:00 |
場所 | 聖心女子大学 4号館/聖心グローバルプラザ 3階 ブリット記念ホール 東京都渋谷区広尾4-2-24 |
主催 | SDGs文化祭実行委員会、(一社)ESD TOKYO、(一社)環境パートナーシップ会議 |
後援 | 東京大学EMPOWER Project、公益財団法人AFS日本協会 |
協力 | 聖心女子大学グローバル共生研究所、多摩大学、立教大学ESD研究所、成蹊学園サステナビリティ教育研究センター、関東地方ESD活動支援センター |
対象 | SDGs、ESD等にご関心のある、企業、行政、NPO等 |
参加者 | 100名 |
実施方法 | 参加の呼びかけに応じた中高生がSDGs課題を学び、任意のグループで課題解決に向けたプランを検討し、アクションに向けた取り組みを実施。 |
■プログラム実施内容
■オープニング・セレモニー
ゲスト参加を含めた13グループの中高生により、取り組み内容の概要を紹介し、ブースに来てもらえるようアピールしました。
■発表(ポスター発表、ワークショップなど)
11のグループで、SDGs課題解決に向けた取り組みについてワークショップやプレゼンテーションを行い、来場された大人・同世代のユースと意見を交わしました。
タイトル | 発表内容 |
街の価値 | 世界的な人口増加やグローバル化によって、より人に必要とされる「街」。 本当に「街」の本質的な価値は「人の生活を支える」ことだけですか? このプレゼンを聞いたら、絶対に街の見方が変わる! |
公共施設で取り組むSDGs ~SDGsを知ってもらうには~ | まず、SDGsとはどういうものか、どんなことが問題になっているのかを知ってもらうため、ポスターを作りました。次にSDGsについて考え、行動のきっかけとなるようなかるたを作りました |
フェアトレードについて | 私は貧困の人たちを救うためにフェアトレードに注目しました。今、沢山の企業が取り組んでいるフェアトレード。私たちがフェアトレードの商品を買うことが、貧困に苦しむ人たちを支援することに繋がります。そして販売者の自立を確立することができます。 |
SDGs広報活動 〜3つの視点から〜 |
今年8月からThe Voice Of Sensation(VOS)という団体として活動しています。SDGsの認知度を上げるために何ができるか、現状の問題とこれからの未来について考えていることを発表します。 |
食品ロスを減らすために | まだ食べられるのに捨てられてしまう食品、「食品ロス」。その量は年間600万トンを超えています。一方、6人に1人の子どもが満足にご飯を食べられない状況にあります。その現状と私たちが考えた解決策を発表します。 |
ちょっと優しい日本の未来~ライフスタイルの多様性~ | じわじわ来てる「ベジタリアン」というライフスタイル。なぜ今この言葉を考えることが大切なのでしょうか? ポスター発表もワークショップも、ベジタリアンという言葉を知らない人でも楽しめるものとなっています。 |
様々な立場から考えた受動喫煙問題解決プラン | 私達は受動喫煙問題を本質的な意味で解決するために、様々な立場の方を集めたワークショップを開催しました。今回のイベントでは、ワークショップで出た意見などを発表します。私達と一緒に問題解決の新たな一歩を踏み出してみませんか? |
難民問題とSDGs | “知ることが難民を助ける支援となる” UNHCRの在日事務所の方から教えて頂いた言葉です。 1人でも多くの方が難民問題を知ることがきっと難民たちの未来を変えます。 皆さんと一緒に難民たちの未来を変えましょう。 |
安心号機 | 現在の信号機について、どのような対策があるのか、提案します。 |
海と持続可能な未来 | 私のSDGsの目標は自然と共生していける社会の実現ということです。色々な原因が環境に影響していると思いますが、今回は「海の環境」という点に注目して、環境問題や解決方法について詳しく発表したいと思います。 |
海と環境の関わり | 海洋ゴミ問題について関心を持ってもらいたく、対策も含めて私たちの考えを発表します。 |
■まとめ
一般の来場者の方の退出後、出展した生徒で集まり、振り返りと今後について話しました。生徒は、実施後の感想を提出するとともに、12月に再度集まり、最終的な振り返りを実施します。最後に、記念の写真を撮り終了しました。
■ゲストコーナー
当日は、SDGs文化祭に参加した生徒の他に、SDGsに取り組むユース団体のコーナーも設けました。
■はなはなSDGs
「はなはなSDGs」は、今回お借りした会場の聖心女子大学の学生が、持続可能な開発目標(SDGs)を知らない人をゼロにすることを大きな目標とし、活動している団体。当日は、SDGsのロゴの大型パネルの設置や、ワークショップにご参加いただいました。
→Twitter
→文部科学省の紹介ページ
■東京大学 EMPOWER projects
東京大学の学生が中心となって、「誰一人取り残さない世界」を実現するための新プロジェクトを立ち上げた組織。今回のSDGs文化祭では、7月のキックオフから全てのイベントに、中高生のメンターとして、課題についてのアドバイスや、ワークショップなどのファシリテーションなどを実施していただきました。
→ホームページ
■Be a Social Tackler.中高生発のSDGsアクション実現へ
中学3年の生徒が、中高生発のSDGsアクションを実現するため、学生団体Sustainable Gameを立ち上げ、賛同した中高生のみで運営する。起業とSDGsを実践的に学べる課題発見DAYの開催や環境コンサルの実施等「誰一人取り残さない世界を作るゲーム」などを実施している。
→facebook
■寿司ゲーム
高校2年生が、海洋資源に関する問題の啓発を目的とし、遊ぶ感覚で学べるワークショップを独自に実施。今回のSDGs文化祭を知り、是非参加したいとコンタクトがあったため、ゲストとして特別に参加して頂いた。「陸上では大気汚染の問題や、地球温暖化問題など様々な問題が起きています。しかし、そうした問題と比べ、海洋の問題では具体的な対策やそれに関する活動が少なく、認知されない状況にあります。」という背景から、寿司ゲームを考案した。
■リアクション
■発表した生徒の感想
SDGs文化祭の開催後、参加した生徒からの感想を一部をご紹介します。
中学3年・女子生徒の感想
1.SDGs文化祭当日の発表はどうでしたか。どのような反応があり、それにどのように応えたかお書きください。(400字程度) | ||
発表を聞いてくださった方々に、私たちが受動喫煙という問題をどのように捉えているかなどといった、自分自身の意見を問われることが多かったが、それらの質問に答えることで自分が持っている考えを再認識することができたので良かった。 SDGs文化祭には様々な立場の方が来られていたので、前回のワークショップよりも多くのタイプの意見を聞くことができた。特に、喫煙社会の変化を実際に経験してこられた大人の方々の意見を聞くのはとても貴重なもので、参考になったと思う。 しかし、今回のイベントに参加していたのはSDGsに興味がある方々であったことから、今後SDGsをよく知らない人ともディスカッションしてみようと思う。 |
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2.SDGsの学びは深まりましたか。自分の考えるSDGsについて、自由にお書きください。(400字程度) | ||
SDGs文化祭を通して、17個のゴールは全て繋がっていることを改めて実感できた。 また、一緒に参加していたメンバーの話を聞いて、実生活の中でもペットボトルを買わない様にしたり、紙を無駄に使わない様にしたりなどと、意識的に行動をとる様になった。そのためSDGs文化祭は、私がゴールの達成に向けて行動する当事者の一人であることをとても身近に感じる良い経験になったと思う。 私は、ターゲットに合わせた内容でSDGsを伝えることで、SDGsは効率的に全世代に広まっていくと思う。 さらに、私は行うことのメリットが明確なアクションほど、社会に広まると思うので、メリットが社会的・経済的なものであっても正当な内容であれば、高く評価されるべきであると考える。 2030年まで残り期間が短くなっているため、私たちは積極的にアクションを行うべきだと思う。そのために、アクションを行いやすい環境づくりにも活発に取り組んでいくことが、今必要とされていると思う。 |
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3.今後どのようなアクションを行いますか。自由にお書きください。 | ||
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高校2年・女子生徒の感想
1.SDGs文化祭当日の発表はどうでしたか。どのような反応があり、それにどのように応えたかお書きください。(400字程度) | ||
SDGs文化祭当日は、とても緊張して最初は手が震えていました。ですが、始まってしまうとあっという間で、あまり考えている時間がありませんでした。反省点としては、準備を事前にもっと入念にしておくべきだったということです。ブースに来てくださった方々は、仕事でベジタリアンが多い国によく行く方や、ベジタリアンという名前だけ聞いたことが方、本当に様々でした。自分のプロジェクトに対しては、好意的な意見が多かったです。ですが、考えさせるご意見や自分が思いつかないような視点からの考えもたくさんありました。例えば、「ベジタリアンが多くなると日本の食文化が薄れるのでは」や「日本人は無宗教だからこそベジタリアンを受け入れる見込みがある」等がありました。私はまず、自分がこのプロジェクト行うのは、「ベジタリアンを増やしたいから」ではなく、「ベジタリアンの選択肢がある社会を目指すため」ということを皆さんにお伝えし、それがエゴになってしまわないようにしたいと話しました。皆さんの中で一致していたのは、「まず知ってもらうこと」ということでした。その上で、個々がそれぞれで選択できるようになるといいという意見が多かったです。私は発表やワークショップ中、自分が全て正しいと思うのではなく、他の人の話を聞きながら一緒に考えるように心がけました。ワークショップでは、ヴィーガン菓子の試食やヴィーガンマークが付いている商品を実際に手に取ってもらったことで、ベジタリアンというライフスタイルを少しでも身近に感じてもらえたのではないかと思います。 企業の方が来られるというお話でしたが、来場者の方が誰が誰か当日分からなかったので、来年からは企業用一般者用のネームタグ等があるといいなと思います。 |
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2.SDGsの学びは深まりましたか。自分の考えるSDGsについて、自由にお書きください。(400字程度) | ||
このSDGs文化祭に参加できたことで、それまではただ興味があるだけで何もできていなかったのが、実際に自分が何ができるか考えそれを実行に移すことができました。そして、自分で考え手を動かしたことでSDGsはそれぞれの目標が独立してるのではなく、全てが繋がっているのだと知り、とてつもない難しさと共にその可能性を感じました。この機会を作ってくださった方々にとても感謝しています。 私の考えるSDGsは、皆が考えるべき当たり前のものです。第一回、二回の話し合いでも出てきましたが、SDGs(持続可能な開発目標)について学校や友達に話すと意識高い系の人に思われてしまうこと。残念というか、悲しいと思います。私にとって未来について考えることは、テスト勉強をちゃんと2週間前からするようなもので、遠くの国の誰かの問題をどうにかしたいと思うのは、友達や家族が悩んでる時に力になりたいと思うようなものです。多くの人が、今のままでは世界が続かないということに気付いて、少しでも自分の未来や子供、孫の世代にまで思いを馳せてほしいと思います。 |
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3.今後どのようなアクションを行いますか。自由にお書きください。 | ||
まず、学生団体の立ち上げを行います。まだ名前やコンセプトは決まっていませんが、メンバーは現在10人ほどです。私の思いとしては、「ベジタリアンの理解を広める活動」、「ベジタリアンに対してのサポートを進める活動」の主に二つの軸に分けて活動したいと考えています。特にサポートを進める活動では、企業の方等に協力していただく必要があるため、ご協力を仰ぐ予定です。また来場者の方お話で、小さなころからの食育が大切だというのがありました。私も学校でのベジタリアンに対しての壁をずっと感じていたので、まだ詳しくは思いつきませんが、学校等の教育機関と協力して何かできないかと考えています。今回の文化祭で、まだまだ色んな視点からのアプローチがあるのだと気付くことができました。また、プロジェクトを超えての繋がりもできました。ここでの経験や縁を大切に、来年の東京2020を見据え急ピッチで頑張っていきます。 個人としては、ベジプロジェクトジャパンでのインターンを続けます。そこで、ベジマップの配布や作成、記事の執筆などをしていきます。また、ゆくゆくはベジプロと学生団体を繋げて何か活動していけるようにしたいと思っています。 |
■来場者とのコミュニケーション
当日は、参加生徒の個人情報保護の観点から、氏名・学校名は出さずに実施し、生徒のSNSなどの連絡先は聞かないことを原則に実施しました。代わりに、個々のグループにメッセージボックスを設置し、連絡を取りたい方や、感想などのメッセージを送りたい方に投函していただくシステムにしました。また、感想ボードを設置し、自由にコメントを書いてもらいました。
【SDGs文化祭:これまでの取り組み】
キックオフミーティング 〇日時:令和元年7月27日(土)13:00~16:30 〇場所:地球環境パートナーシッププラザ(GEOC) 首都圏の中高生、25校31名が参加し、問題意識や興味がある分野の共有を行う。次回までの作業として、自分が取り組んでみたいSDGsの課題を考えた。 |
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2ndセッション(1日目) 〇日時:令和元年8月24日(土)9:30~15:00 〇場所:中目黒GTタワー 個人が考えてきたSDGsの課題とその解決方法について、目黒区青年会議所の開催するフェアに来場した市民や大学生との対話を通じ、SDGsの課題とその解決方法をブラッシュアップ! |
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2ndセッション(2日目) 〇日時:令和元年8月25日(日)9:30~14:30 〇場所:東京大学駒場国際教育研究棟 課題解決のアイデアを持ち寄り、文化祭に向けたチームを作りSDGsプロジェクトを固めた |
■コーディネーター
〇桐蔭学園トランジションセンター専任講師:松井晋作氏
高校教員を10年間務めたのち、多摩大学を経て現職。目黒区・多摩市などで教育コーディネーターに従事する中で、関東地方ESD活動支援センターのユース応援企画のコーディネートを行う。研究分野は、ESD・SDGs・インクルーシブ教育・学校と仕事・社会をつなぐトランジション。
〇文化祭企画委員:佐藤駿介氏(私立学校教諭)
大学で政治学を学び、一般企業に勤務。その後、大学院を卒業し、私立高校の教員となる。
「実践に伴う知識の獲得」を掲げ、現在はESD/SDGs学習推進担当として活動している。
■協力団体
〇東京大学EMPOWER Project
東京大学の学生が中心となって、「誰一人取り残さない世界」を実現するための新プロジェクトを立ち上げました。私たちは、「協力が必要な時は、お声を!」の気持ちを表すマークである「マゼンタ・スター」を広めていくことで、困った時、協力してくれる人をみつけやすく、誰もが誰かのためになれる世界をつくることを目指しています。
キックオフミーティング | 令和元年7月27日 |
2ndセッション(1日目) | 令和元年8月24日 |
2ndセッション(2日目) | 令和元年8月25日 |
SDGs文化祭 | 令和元年11月16日 |
まとめ:伊藤博隆(関東地方ESD活動支援センター)