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2024.08.01 SDGs関連 センター事業 レポート 

<開催報告>ESD for 2030学び合いプロジェクト「気候変動による山北への水害リスク増大と、私たちにできること」 神奈川県立山北高校 気候変動に関するESD授業

←令和6年度ESD for 2030学び合いプロジェクト
関東地方ESD活動支援センターでは、令和4年度より「ESD学び合いプロジェクト」として、「気候変動による影響と対策に関する、学びと実践」をテーマに、プログラムを実施しています。3年目となる令和6年は、神奈川県立山北高校にご協力をいただき、2年生を対象に総合的な学習(探究)の時間において、気候変動に関する授業を実施しました。

山北町では、地形の特色を活かして農業用水を利用した小水力発電設備を設置しています。今回は、気候変動や地形、防災について専門家によるレクチャーの後、その発電設備を題材に再生可能エネルギーについて学びました。授業は、山北町及びESDfor2030学びあいプロジェクトの関係者が参観しました。

 

【実施概要】

日時 令和6年7月10日(水) 9:40~12:30
場所 神奈川県立山北高校
対象学年 2学年
実施内容 気候変動による山北への水害リスク増大と、私たちにできること
講師 気候変動教育:神奈川県気候変動適応センター
地理教育:神奈川県立生命の星・地球博物館
防災教育:山北町役場地域防災課
エネルギー教育:(一社)自然エネルギー推進機構
主催 一般社団法人 自然エネルギー推進機構(地域ESD拠点)
関東地方ESD活動支援センター

→ これまでの本プロジェクトの取組み(令和6年3月3日 於:流山エルズ(流山市生涯学習センター))

→これまでの本プロジェクトの取組み(令和6年2月1日 於:佐倉市立根郷小学校)

→これまでの本プロジェクトの取組み(令和4年7月〜令和5年3月 於:流山市立東部中学校

 

【プログラム】

 

導入:今日の学びに向けたマインドセット、気候変動動画視聴によるインプット
(関東地方ESD活動支援センター)

本日の全体の流れを共有した後、講義に先立ち、自分自身が気候変動についてどういうイメージを持っているか、また自分とどのような関係があるかを書き出す個人ワーク、それを共有するグループワークから開始しました。

その後、神奈川県気候変動適応センターの動画教材『(基礎解説編)いまそこにある危機 -気候変動問題とわたしたち-』を視聴しました。

導入・全体進行用資料(2,016KB)

神奈川県気候変動適応センター動画教材『(基礎解説編)いまそこにある危機 -気候変動問題とわたしたち-』

 

講義(1) 原因を知る:気候変動(神奈川県気候変動適応センター)

神奈川県気候変動適応センターより、「気候変動影響と対策」についてお話をしていただきました。

<発表要旨>

・気候変動が起きる要因
・科学者による認識の変化:IPCC第6次報告書では「人間の影響に疑う余地がない」
・世界および神奈川県の温度変化:化石燃料に依存し続けた場合、21世紀末には+4.8℃
・気候変動によるさまざまな影響:極端な降水、破壊的な台風、海の酸性化、生き物への影響、食べ物への影響
・気候変動の対策:緩和策と適応策を車の両輪としてともに推進

 

講義(1)発表資料(1,990KB)

 

講義(2) 原因を知る:地域の地形の成り立ちと特徴(神奈川県立生命の星・地球博物館)

神奈川県立生命の星・地球博物館より、神奈川県、丹沢および山北町の地形についてお話をしていただきました。

 

<発表要旨>

・神奈川県西部の地形:丹沢山地はプレート移動してきた伊豆に押されて隆起して出来た
・神奈川とプレートテクノニクスの関係:プレートが沈み込み、伊豆小笠原弧と衝突した
・丹沢山地の成り立ち:約1700万年前に海底火山として誕生、伊豆地塊が衝突した境界には構造線がある
・山北の地形:隆起した山は侵食され、土砂は河川で運ばれる

講義(2)発表資料(1,940㎅)

 

講義(3) 対策を知る:防災、ハザードマップ(神奈川県山北町役場地域防災課)

 

高校がある地元の山北町より、地域の防災への取組み、ハザードマップについてお話をしていただきました。

<発表要旨>

・異常気象、自然災害の増加:天災は忘れる間もなくやってくる!
・災害を知る:山北町が備えるべき災害:南海トラフ、相模トラフ、神奈川県西部の地震。洪水、土砂、強風など風水害は、予報により予め対応準備が出来る
・令和元年台風19号:山北町箒沢でも24時間で610mmの大雨、支所建物の裏手で土砂崩れ発生
・ハザードマップの狙い:土砂災害・洪水に関する危険度情報、避難行動に関する情報、災害情報の伝達に関する情報を提供するもの
・ハザードマップを見る:山北高校の場所を確認。避難所に指定、校庭はヘリポートとして指定、周辺には浸水想定区域と土砂災害警戒区域が存在
・命を守る行動:備蓄、避難。高校生の皆さんが出来ること「挑戦」と「献身」

講義(3)発表資料(2,591KB)

 

グループワーク(1) 講義を振り返る

気候変動、地形、防災/ハザードマップの3つの講義の後、「印象に残ったこと、大事だと思ったこと、分からなかったこと」を各自で振り返り、グループで共有しました。

生徒の感想「印象に残ったこと、大事だと思ったこと」

● 人間の行動も地球温暖化の原因であること
● 地形の成り立ち、プレートテクトニクス
● ハザードマップの重要性、山北町の危険区域
● 災害での行動と対策

 

講義(4) 対策を知る:再生可能エネルギー(自然エネルギー推進機構)

 

地域ESD活動推進拠点であり、山北町で農業用水を活用した小水力発電を設置した一般社団法人 自然エネルギー推進機構より、再生可能エネルギーと地域防災についてお話をしていただきました。

<発表要旨>

・再生可能エネルギー:太陽光、風力、地熱、中小水力、バイオマスなど。温室効果ガスを排出しない
・日本のエネルギー:8割を占める化石燃料はそのほとんどが輸入。再生可能エネルギーはエネルギー自給率向上につながる
・小水力発電:水資源が豊富で起伏に富んだ山北町の特徴を活かした発電。低炭素、エネルギー地産地消に加え、防災電力や福祉用電源として利用

講義(4)発表資料(2,373KB)

 

体験 蓄電池を持ち、充電してみる

 

小水力発電が設置されている山北町パークゴルフ場の管理棟には、緊急時に利用できるバッテリーが配置されています。災害が発生した時など、必要な時に必要な場所に届けることが出来るか、実際にバッテリーを持ち、充電する体験を行いました。

グループワーク(2) 自分たちが出来ることを考える

 

すべての講義の後、各グループでテーマを設定し、自分たちが出来ることを考えるグループワークを行いました。テーマは、「災害が起こった時にとる行動、日常的な対策」「山北町の小水力発電の活用の仕方、そのために自分たちが出来ること」などを設定しました。

生徒の感想「今後やってみたいと思ったこと」

・再生可能エネルギーの利用など、温暖化を緩和する対策
・植物を植える、熱中症対策
・小水力発電の設置場所の視察
・災害が起きた時に積極的に地域の人と交流、ボランティア
・災害時の行動について家族との話し合い
・自宅の地域のハザードマップの確認
・避難経路の確認、防災用品の準備

 

自治体担当者の感想

・毎年、「防災の時間」で講義をしているが、大きな風水害が気候変動と関係しているという根拠を示すことが出来て、幅広い観点からで勉強になった。地域の防災にも役立てていきたい。
・専門性の講師陣の講義で、山下町パークゴルフ場に小水力発電を設置していることが、高校生の教育までつながってよかった。
・高校生も1から学べる、わかりやすい内容だったと思う。町は環境計画を改定する時に意見をもらっている。環境教育と、それによる一人一人の行動変容が重要なので、今日の学びを活かしたい。役場単独だとできない教育の場が持てて良かった。

 

【関係者による振り返り】

授業終了後、学びあいプロジェクトのメンバー、および授業を視察した関係者の皆様にご参加いただき、振り返りを行いました。

良かった点

・高校生を対象とした講義として、内容が濃く分りやすかった。
・日常と違う授業でざわついた状況でも、動画は集中して視聴出来ていた。
・地域の航空写真をみんなで見て、学校の場所を探し地形を把握するのが良かった。
・地元地域の防災の話を、自治体の職員の方にお話いただけたことが良かった。
・高校生に刺さるキーワードが必要である。バッテリーの体験において、「これ1台で100人分のスマホが充電できる」ということには高い関心が示された。
・自分の意見を書き出すことで、発言が得意でない生徒もアウトプットする機会が設けることが出来た。

改善点

・各講義の内容が濃かった半面、それぞれのつながりが伝わらなかった。1つ1つの講義の後に、そのつながりを丁寧に説明したほうがよい。
・現在は、「気候変動→地理→防災」という流れだが、それを逆にして「地理→防災→気候変動」という順序を検討しても良いのではないか。
・細かい資料は手元のタブレット等で見られると良い。
・気候変動は遠いイメージになりがちなので、例えば「2100年は“皆さんが90歳くらいの時の事”」、「雨〇㎜は、“水の量を示す”」など、ちょっとした情報から実感につなげると良い。
・グループワークに不慣れな生徒もいるので、大人のサポートがもう少しあっても良い。
・グループワークで議論するテーマを選択制としたが、考えるのが比較的簡単だからという理由で選択しているグループもあり、テーマに偏りが生じた。テーマを割り当てることで新たな気付きを促すことが出来たのではないか。

今後の発展性

・これまでの取組みで、小中学校で実践してきたが、今回新たに高校生を対象に実施出来た。資料や内容の難易度を分けた、小学生用、中学生用、高校生用が揃うと良い。
・「具体的な行動」につなげて考えるよう促すとさらに学びが深まるのではないか。「災害が起こった時、どのような行動をとるか」にテーマを絞り、①主体別(誰が?)、②衣・食・住のシーン別、③事前・最中・事後の備えなどに分けて議論するなど。

 

【主催・お問合せ】

関東地方ESD活動支援センター 担当:伊藤、松沼

東京都渋谷区神宮前5-53-67 コスモス青山B1F

TEL:03-6427-7975

kanto★kanto-esdcenter.jp(★を@に変化してお送りください)

http://kanto.esdcenter.jp

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